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東京地方裁判所 昭和53年(ワ)4448号 判決

一 請求の原因1、2及び4の各事実は当事者間に争いがない。

二 被告製品が、本件考案の技術的範囲に属するか否かにつき判断する。

1 右当事者間に争いのない本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載及び成立に争いのない乙第一号証(本件実用新案公報)によれば、本件考案の構成要件は請求の原因3(一)のとおりであると認められる。

2 対比

右事実によれば、本件考案においては、角軸cは、その両端に近い部分に締付ボルト13を螺合し、右角軸中に挿入し得る寸法をもつ接手軸dにより、連結される構成である(構成要件B1、C、c1)のに対し、被告製品においては、角軸c’は、同じく右角軸中に挿入し得る寸法をもつ接手軸d’により連結されるが、角軸c’は締付ボルトを有さず、接手軸d’はその中央部付近外面に一個の突合せ突起13’を固設する構成とされており、本件考案と被告製品とは、右の点において、その構成を異にしていることが明らかである(この点は、原告の自認するところである。)。

原告は、右の構成の相違について、当業者が容易になし得る設計上の変更であつて締付ボルトと突合せ突起は等価物である旨主張するので、右の構成の相違により作用効果上も相違を生ずるか否かについて検討する。

前掲乙第一号証によれば、本件実用新案公報の考案の詳細な説明の欄において、出願人は、従前の温室用カーテン開閉装置の取付装置について、「従来は温室の骨組であるアングル材やチヤンネル材上に任意適当数の軸受を溶接などにより固定し、それらの軸受の間に回転軸を挿通し、該軸と左右のドラムとをキーその他の方法により固着していたのであるが、温室の幅Wの寸法は種々異なるため、その回転軸の長さを現場合わせにて決定しなければならず、かつ大面積の温室の場合にはその回転軸の長さも著しく長くなるため、溶接や軸継手などの現場合わせ作業により接続する必要があり、これらのためにカーテン開閉装置の取付けに多くの時間と労力とを必要としていた。(同公報二欄三ないし一四行目)」とその欠点を指摘し、「本考案はかゝる点を改善し、溶接やネジ切りなどの現場加工を必要とすることなく、簡単かつ迅速にカーテン開閉装置を取付けることができるようにしたものである。(同公報二欄一五ないし一八行目)」と本件考案の目的を挙げ、次いで本件考案の構成についての説明の中で全体の軸の長さの調節について、「全体の軸の長さは角軸Cと接手軸との嵌め込み長を調節することによつて任意所望の長さにすることができ、かくして軸長を決定した後締付ボルト13、14を締付けて取付を完了する。(同公報三欄二三ないし二七行目)」と説明し、最後に「本考案は、軸受aと、該軸受に挿入される短軸金具bと、任意各様の長さをもつ角軸cと、2つの角軸c、cを接続する接手軸dとドラムに固定される中空角部eとよりなりこれらを組合わせて締付ボルト10、13、14により締付けるだけで、特殊な軸接手や現場合わせ加工を施すことなく如何なる寸法幅をもつ温室にも簡単かつ迅速に取付けることができる効果がある。(同公報三欄二八行目ないし四欄二行目)」と本件考案の作用効果について記載していることが認められ、また、成立に争いのない乙第二号証の一ないし八によれば、本件考案の実用新案登録出願手続において、出願人は、昭和四七年三月七日付の拒絶理由通知に対し、同年六月二七日に明細書全文及び図面を対象とする、同月二八日には図面を対象とするそれぞれ手続補正書を提出して原明細書を補正すると共に、同月二七日、意見書を提出し、その中で、「本考案は……、簡単かつ迅速にカーテン開閉装置を取付けられるようにすることを目的とするもので、そのため、別紙補正書により明確ならしめましたように軸受a、短軸金具b、角軸c、接手軸d、中空角部eとよりなる各部分品を構成し、その部分品は請求範囲に明記した特殊な構造を備え、これにより如何なる寸法幅の温室に対しても適用することができるようにした」と述べて本件考案の構成によりもたらされる右作用効果を強調して、右各補正書による補正後の明細書及び図面に基づいて登録査定を受けた事実が認められる。

この事実によれば、本件考案においては、角軸cに嵌め込む接手軸dの長さを調節し、角軸cの両端に近い部分に螺合された締付ボルト13を締付けて接手軸dを固定する構成をとることによつて、角軸cを任意所望の長さに連結することを可能にし、全体の軸の長さの調整及びその取付けを従前の溶接や軸接手などの現場合わせ作業に比し簡単かつ迅速化した作用効果を奏するものと認められる。

これに対し、別紙物件目録の記載によれば、被告製品の角軸c’は締付ボルトを欠き、接手軸d’は角軸c’に挿入し得る寸法をもち、かつ、その中央部付近外面に一個の突合せ突起13’を固設した構成であるから、角軸c’の連結は各々の角軸c’に接手軸d’をその突合せ突起に突き合わせるまで挿入することによつて行われるのであつて、この構成においては角軸の連結長を調節する機能を有しないものと認められる。

原告は、被告製品の角軸c’と接手軸d’とは長さの調整機能を有し、角軸c’に接手軸d’をその突合せ突起に突き合わすまで挿入しなくても角軸c’を連結できる旨主張するが、被告製品において角軸c’に接手軸d’をその突合せ突起に突き合わすまで挿入しないで角軸c’を連結し、これをカーテン開閉用ドラムの駆動軸として使用するときは、接手軸dは角軸c’に挿入し得る寸法をもつものである以上該接続部分にガタが発生することは明らかであり、右の如き接続方法は、被告製品の正常な使用方法として通常予想されえないものと認められるから、原告の右主張は採用できない。

したがつて、被告製品は、本件考案との前記構成上の差異により本件考案の有する右作用効果を奏しえないものと認められる。右の認定を左右するに足りる証拠はない。

以上のとおり、被告製品と本件考案との前記構成の差異により、作用効果においても差異が生ずるのであるから、前記の構成の相違をもつて単なる設計変更ないしは等価物ということはできない。したがつてその余の構成について対比するまでもなく、被告製品は、本件考案の技術的範囲に属するものと認めることはできない。

三 よつて、その余の点につき判断するまでもなく、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却する。

〔編註その一〕本件登録実用新案に関する事項は左のとおりである。

1 原告は、次の実用新案権(以下、「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有する。

考案の名称 温室用カーテン開閉装置の取付装置

出願日   昭和四五年六月一六日

出願公告日 昭和四九年一一月六日

登録日   昭和五〇年七月三一日

登録番号  第一〇九〇二二三号

2 本件考案の実用新案登録出願の願書に添附した明細書(ただし補正後のもの、以下、「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の記載は、別添実用新案公報の実用新案登録請求の範囲の欄記載のとおりである。

3(一) 本件考案の構成要件を分説すれば次のとおりである。

A 温室内の骨組材に固定した軸受aに短軸金具bを回転自在に嵌合していること

A1  上記軸受aは、円形の軸受部7の一側に温室の骨組材15を挿入し得る空間8をもつ取付脚9を一体に形成し、かつ該取付脚に前記空間8に向けて突出し得るように締付ボルト10を螺合してあること

A2  上記短軸金具bは、前記軸受部7中に回転自在に嵌合されるリング11と、該リングと一体的に結合された中空角軸部12とから構成されていること

B その短軸金具bに角軸cを結合していること

B1  この角軸cは、前記短軸金具bの中空角軸部12中に挿入し得る寸法をもち、かつその両端に近い部分に締付ボルト13を螺合してあること

c かつ該角軸cを接手軸dにより任意所望の長さに連結していること

c1  この接手軸dは、前記の角軸c中に挿入し得る寸法を有していること

D 角軸cの両端をドラムに固定した中空角部eに挿入して固定すべくなしてあること

D1  この中空角部eは、前記の角軸cを挿入し得る寸法をもち、その一端を巻取巻戻しドラム4に挿入固定して、その一部をドラムから突出させ、その突出部分に締付ボルト14を螺合してあること

E 温室用カーテン開閉装置の取付装置であること

〔編註その二〕本件に関する別紙物件目録は左のとおりである。

別紙 物件目録

一 名称

温室用カーテン開閉ドラムの取付装置

二 説明

1 軸受a’(回転体b’及び円形外輪7’並びに取付脚部から成る)、角軸c’、接手軸d’、カーテン開閉用ドラム4’及びストツパー部材5よりなる。

上記軸受a’のうちその取付脚部は、円形の外輪7’の一側に、温室の骨組材15’を挿入しうる空間8’をもつ二又状取付脚9’を形成してなり、かつ該取付脚に前記空間8’の内方に向けて突出し得るように締付ボルト10’を螺合している。

また、上記軸受a’のうち回転体b’は、筒状の内輪11’と、その内周中央部に一体的に形成された角孔軸受板12’とからなつており、内輪11’は、前記外輪7’中にベアリング50を介して回転自在に嵌合され、第6図に示すごとくその両側周に設けたフランジ部5151により前記外輪7’の側面を覆うようにしてあり、また角孔軸受板12’は、その中央部に正方形の軸受角孔12a’を有する。

なお、この軸受内回転体b’は左右対称の二つの部材に分割されていて、各々を外輪7’の左右から嵌め込み、中央部において合体した左右の角孔軸受板12’をボルト・ナツト止めにしてある。而して、前記円形外輪7’のなかに、回転体b’を嵌めこむようになつている。

角軸c’は、前記軸受板12’の軸受角孔12a’中に挿入し得る寸法をもち、

接手軸d’は、前記の角軸c’に挿入し得る寸法をもち、かつ、その中央部付近外面に一個の突合せ突起13’を固設してある。

ドラム4’は、カーテン開閉用のロープを巻込み又は巻戻しするためのドラム面4aと、その回転軸心において前記中空角軸c’を嵌合しうる寸法をもつ角筒状軸受枠e’とをプラスチツクスによつて一体成形したもので、ドラム面の内壁部と角筒状軸受枠e’の外壁部との間は、軸方向に沿つて放射状に占位する一二枚の板状の接合壁部4cによつて一体に接合されている。また、これらの接合壁部4cはその中央部において直交する隔壁部4dによつて一体化されている。

そして、この隔壁部4dの一部に肉厚部4eが設けてあり、この肉厚部に、ドラム面外方から軸受枠e’に向つて螺子孔53が設けてある。螺子孔53は軸受枠e’に直交しており(したがつて、嵌合された中空角軸c’の一側壁に直交しており)、該螺子孔53に螺合せしめた固定ねじ14’が、軸受枠e’内に嵌合した中空角軸c’の側面に圧接し、中空角軸c’にドラム4’を固定しうるように構成してある。なお、固定ねじ14’がドラム面に突出することはない。

また、ドラム面の両側には鍔部4bが設けてあり、前記軸受枠e’及び接合壁部4cもこの鍔部の外面と同一面内にあつて軸方向において外方に突出していない構成である。

次にストツパー部材5は、前記中空角軸cを挟持し、ボルト5aとナツト5bによつて強圧することによつて中空角軸c’に固定しうるように構成してある。

このストツパー部材5は、両端部の骨組材15’において中空角軸c’を支持する軸受a’の内側に位置して固定される。

2 右に記載した各構成要素について

軸受a’をその取付部分によつて温室内の骨組材に固定し、かつ筒状内輪11’の軸受板12’の角孔12a’に角軸c’を挿通結合し、さらに該角軸c’を接手軸d’により温室の大きさに従つて所望の本数を結合し、ドラム4’中の軸受枠e’に角軸c’を挿入して固定ねじ14’によりドラム4’を固定し、さらに第3図に示すとおり両端部の骨組材15’において軸受a’の内側の位置にストツパー部材5を角軸c’に固定すべくなした

温室用カーテン開閉ドラムの取付装置。

三 図面の簡単な説明

第1図はカーテン開閉装置を示す温室の線図的側面図、第2a図は第1図における一部省略平面図、第2b図は二棟続きにした際の一部省略側面図、第2c図は第2b図における一部省略平面図、第3図は第1図におけるP―P線一部省略正面図、第4図は各部の分解斜視図、第5図は第3図におけるドラムのV―V断面図、第6図は第3図におけるⅥ―Ⅵ断面図、第7図は第3図における接手軸のⅦ―Ⅶ中央断面図、第8a図および第8b図は第4図における取付脚9’の脚端部材の交換部品を示す斜視図である。

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